かにみそさそり座

のーみそこねこね

お久しぶりです。

片づけをしていたら、中高時代に書いた詩(裏に小説)のルーズリーフが三枚出てきたので、こっそりとここに書き残しておきます。(黒歴史のこしです)

 

 

 

転生

 

かたつむりの僕は

そうだ なめくじになろう と

ゆったり重い貝を脱ぎました

 

そうしたら 僕の背中には

ざっくり切れた傷の痕がありました

これじゃあ 塩をぱっばとふられたら

みるみる沁みてしまうだろう

 

なめくじの僕は

そうだ うみうしになろう と

つるぼけのきゅうりから逃げました

 

そうして 僕は海へ行ったら

ふなむしたちは僕の傷を笑いました

これは鮮やかな模様のひとつだ

いいきかせても誰もきいちゃいないや

 

うみうしの僕は

潮風に当たるたびに

ひりりと沁みる傷痕を舐めながら

浜辺で貝を探すのですが

かたつむりだった僕には海の貝はあまりに重すぎて

 

いつの間にか満ちていた波にさらわれながら

そうだ やどかりになろう と

とけてゆく身体を見ながら思うのでした

 

 

 

わがまま

 

この窓の淵が世界の果てなら

この教室は星なんだろう

君が頬杖をつく、窓際の席から

一体どんな世界が切り取られているんだろう

一体この星から、何光年も先に、

どんな星が瞬いているんだろう

 

けれどそれだってもう何年の昔の光なのだ

今はもうないかもしれない、過去を眺めている僕らに、

どれだけの星が訴えているんだろう

君らは生きているんだ、なんて

きこえていますかって

 

この鉛筆が君の心臓なら

この手紙は僕の存在なんだろう

僕が座る教室の真ん中の席で

一体どれだけの君を殺してきたんだろう

一体君は何を思っていたんだろうね

僕がぽきりと折ってしまえばはいおわり

 

けれどそれだってもうね何も関係ないのだ

今もここにある、僕も君も目を閉じたのに

声帯の端の方から少しずつ削られていく

僕らは生きているんだ、なんて

しんじられないくらいに

 

悲鳴をあげそうな手紙を破り捨ててしまえ

わがままな僕らの青春は

あわになって消えるのだ

 

 

 

暗い灯台

 

首の短いきりんには

遠くのものが見えません

青に届きそうな首が欲しいんだ

きりんはゆっくり歩きます

 

首の短いきりんには

遠くのものが見えません

赤に染まりそうな首が欲しいんだ

きりんはそろそろ休みます

 

首の短いきりんには

遠くのものが見えません

黒に浮かぶような首が欲しいんだ

きりんはうとうと眠ります

 

首の短いきりんには

遠くのものが見えません

夢で出会ったどこかのだれか

きりんははっきり起きました

 

どこのだれだったんだろう

首の短いきりんには

遠くのものが見えません

けれどきりんは思ったのです

知覚のものだって見えないと

見る努力だってしていないと

ぞんだものがすぐそこにあったのに

灯台はいつ照らされるのだろう

短い首をまるめながら

きりんは二度寝をするのでした